中国で誕生した人類の医療
鍼灸治療の歴史は遠く中国にさかのぼり、その発祥は数千年前といわれ、漢方薬とともに東洋医学の中心となってきました。
はじめは石の針が用いられ、金属文明の発達とともに、鉄針が使われる様になり、その診断及び治療の技術も体系化されてゆき、これらを集大成した最古の医書『黄帝内経』は、すでに紀元前に書かれています。
現代に通じる理論の確かさと歴史の重みは、あらためて古代中国人のすぐれた生活の知恵と病気に対する洞察の鋭さをうかがわせます。
日本へ渡来して
6世紀頃、仏教と共に中国から渡来した鍼灸は、奈良時代、既に日本最古の「医疾令」に鍼師、鍼博士、鍼生等の制度として、記録に残っております。
その後、江戸時代から明治初年にかけ、日本医学の主流は、漢方薬治療と、鍼灸治療が重要な位置にありました。
明治以降になって、西洋医学をとり入れた医療制度に代わり、この時以来西洋医学を洋方、日本の伝統医学を漢方と呼ぶようになりました。
近年、中国の鍼麻酔が注目され、鍼の臨床効果が認められるに従い、「鍼がなぜ効くのか?」科学的に研究解明されるようになりました。この経験的に確立された医療技術に対して、西洋医学も積極的にアプローチを進めています。
いまや、鍼治療は、中国や日本のみならず、欧米をはじめとする世界各国で、盛んに行われております。最近の国際鍼灸学会は、世界中より50ヶ国以上の参加をみる盛況ぶりです。
鍼灸は東洋医学
大きな宇宙という自然の中で生活している人間を、心とからだで形づくられた小宇宙と考えます。小宇宙の中を、気と血が流れていて人間は生きています。
この大宇宙と小宇宙、気と血のバランスがくずれた時、病気になると考えるのが、東洋医学の疾病観(しっぺいかん)です。
鍼灸は、そのバランスを調整する医術なのです。
治療の基本には、経絡と経穴(=ツボ)があります。経穴(=ツボ)は、長い歴史の上で経験的に見つけられた特別に治療効果のある体表上のポイントで、最も代表的なツボは全身に365個あります。それらのツボは気血の流れにしたがって、14本のルートに分かれ、これを経絡といいます。経絡と経穴の関係は丁度、鉄道の路線と駅のようにお考えいただくと、分かりやすいでしょう。
病気の予防に
2000年以上前に書かれた『黄帝内経』という医書に、「未病を治するは名医なり」とあります。
これによって、当時既に、鍼灸は予防に重点をおいた治療を行っていたことが分かります。
西洋医学では、病名が決まってから治療が始まりますが、副作用のない鍼灸治療は健康の維持、疲労の回復、成人病の予防等を目的として定期的に受けることをおすすめします。
特に現代の生活は、肉体的、精神的にもストレスのたまりやすい環境です。体がだるい、首や肩がこる、良く眠れない、食欲がない等、といった半健康状態の人々が増えつつあります。
この様な時、是非、予防に役立つ鍼灸治療で、健康な体を維持し、元気な毎日をお過ごし下さい。